— Kenji Sekiguchi

レーベルが出来ること

久々の書き物です。

現代では、インターネットによってアーティストとリスナーの交流が活発となりました。業界は進化し続け、アーティストが自身で音楽を売ることが出来るシステムも開発され、ビジネスモデルの改革が起こりつつあります。レーベルの存在意義が問われる意見もちらほら見るようになりました。

僕のレーベル運営に対する考えは色々ありますがその中でも、業界の中で「レーベルが出来ること」に絞って記事を起こしてみます。

僕はアーティストによって作られた音楽がリスナーに届くまでの一連の流れを「生産」と見なしています。生産には、生産者(アーティスト)と生産性を上げる人(レーベル)の両者が居て最大限のパフォーマンスが発揮され、より多くの方に音楽を楽しんでもらえると考えています。

レーベルがアーティストの生産性を高める手段としては、楽曲の販売業務や流通経路の開拓はもちろんですが、それ以外に楽曲の質向上のための助言、ウェブサイトやラジオを利用した販売促進活動、外部のレーベルなどからの仕事の紹介、レーベルのブランド価値の提供などがあります。

ですが上に挙げたものは時代によって変わって行くものであり、本質的なものだと考えていません。アーティストの生産性が高まる本質的な要因は、レーベルがレーベルメイト達の「共創の場」として機能することだと考えています。

レーベルメイト同士の関わりと言えば、コラボレーションやリミックスといったお客さんの目に見える形での交流が挙げられます。それ以外にも、作曲技術、音楽活動に対する意志、哲学的背景、いわゆる職人芸と言われる言葉にしにくい知識など、お客さんの目に見えない部分でも貴重な知識が交換されることがあります。これらが一人一人のアーティストに技術的・精神的に良い方向に作用していることを、これまでの活動で実感しています。

つまるところレーベルが出来ることは、その時代に最適でかつ一人一人のアーティストに合わせた方法で生産性を高めることと、所属するアーティスト達に共創の場を提供すること。この2つが本質的な使命なのではないかと考えます。これらを押さえないと、いずれレーベルという存在も業界から淘汰されてしまうのではないかという危機感があります。